栃木県を中心に31店舗を展開する『オータニ』。フードオアシスオータニやスーパーマーケットオータニという2種類の形式で、創業以来地元の人たちのためにと運営してきました。
そんな株式会社オータニは、りそなグループBリーグ2024-25シーズン年間チャンピョンを制した宇都宮ブレックスのパートナー企業でもあります。“地域を盛り上げる”スポーツと、“地域の人たちの生活を支える”スーパーマーケット。その共通項と可能性を探るべく、2023年から社長に就任した川野泉さん(以下、川野)にお話を伺います。
これまで他のスーパー全国チェーンのオペレーターとして、スポーツを身近に感じていた川野さん。その真髄に迫ります。

栃木県内に根差した“スーパー・オータニ”の誕生
大谷家が始めた駄菓子屋さんが創業のきっかけであるオータニ。その歴史は約80年にも及びます。昭和57年からはスーパーマーケットとして株式会社オータニを設立し、栃木県宇都宮市を中心に地域のお客様のファンを広げていきました。こうして地道に商売を広げてきたオータニは、2013年には栃木県内のスーパーでも1位の売上を記録しましたが、その後は厳しい経営状態が続き、2021年にはアークスグループの傘下に入り、今まさに転換期を迎えている企業です。2023年から社長を務めることになった川野さんは、オータニのよさと課題についてこう語ります。
川野)この栃木県内のローカルな狭い地域に31店舗も展開しているというのは、オータニの大きな特徴です。国道4号線沿いに広がる街に多くの店舗を抱え、その地域の方々の課題に寄り添った戦略の展開がしやすい環境にあります。
ただ、これまでの苦境はその戦略が地域に寄り添いきれていないものになってしまっていたり、自分たちが“いいものを売っている”という自信がお客様や取引先に対してネガティブに働いてしまったことがあるのではないかと考えています。

地元に密着し、堅実に店舗数も伸ばしていったオータニを「いままでのいいところも活かしながら、普通のスーパーに戻そう(川野)」というオータニ。地元の人たちからも昔から親しまれていて、知られている存在だからこそ、地域に寄り添った戦略を改めて考えていく機会になっています。
オータニの根強いファンと、新たなファン獲得への道
川野社長を中心に、歴史あるスーパーマーケットであるオータニは現在改革の最中にいます。指針や方針を本部から出しながら、現場で細かな部分を徹底する。オータニの“軸”を大事にしながら、よりお客さまに寄り添う店舗になっています。
川野)この地域の人たちからすると、“オータニ”という名前は昔から身近な存在で、根強いファンが多くいると感じています。今までのことをすべて変えるわけではなく、そうしたファンの人たちをコアにしながらさまざまなお客さんに“安心感”を与えながらリピーターとなってくれる方を増やしていきたいですね。

川野)すべてに満足していただくようになるのは難しいことですが、SNSにおける“いいね”ボタンのように、ライトにいいポイントを評価していただくことが大事です。好きな商品が安くて“いいね”、売場やトイレに清潔感があるから“いいね”など、気軽にいいポイントを見つけていただけることが長い目で見た信頼感につながっていきます。
気持ちの近さをつくる|スーパーマーケットとスポーツの関係性とは?
スーパーマーケットへの来店の動機となるのは、家から近いという“物理的な近さ”だけでなく、“心理的な近さ”も大きく影響します。物理的な距離は変えられませんが、気持ちの近さは接客や品揃えで私たちがバージョンアップしていけばお客さまの印象を変えることができます。
川野社長は、西友の宣伝担当として1994年〜97年まで女子サッカーチーム『読売西友ベレーザ(現東京ヴェルディベレーザ)』とともに活動していました。そんな川野さんから見ても「Jリーグの地域密着の理念は、スポーツと小売の関係性を変えた(川野)」と言うほどの衝撃だったそうです。
川野)スポーツチームは親会社のためのものではなく、地域に根ざして初めて持続可能なものになると思います。小売業もスポーツチームのように、“地域に根ざしていかなければ”ということを改めて気付かされる機会になりましたね。
現在オータニがスポンサーをしている宇都宮ブレックスさんも、地域に密着しているチームだと感じています。地域も経済状況もまわりの環境もどんどん変わっていく中で、自分たちからしっかりまわりに合わせて施策を打ち、理解してもらえるように取り組まなければなりませんよね。

「プロスポーツにはお金がかかるもの」という消費者の認識も増えている中、宇都宮ブレックスの試合で看板を出していることにも意味があると川野社長は言います。「オータニというスーパーは、自分たちの好きなブレックスに協力してくれて、応援してくれる企業なんだと伝わる(川野)」ことは、小売と消費者の“心理的距離”を縮めることに役立っています。「宇都宮という都市のイメージアップにもブレックスは貢献してくれています。今後は応援するだけでなく、コラボレーションなどを通して“一緒に”なにかできないかと考えていきたい(川野)。」というコメントからも、スポーツへの期待感が伺えます。
川野)私が女子サッカーと関わっているときには、新店舗オープンの際は必ずその店舗の近くで地域の子どもたち向けのサッカー教室を行っていました。子どもたちや地域の方々が喜んでくれる活動は、間違いなくイメージアップに繋がりますし、商売に繋げることができますよね。
これからの小売とスポーツの形
宇都宮ブレックスという、Bリーグチャンピオンチームをスポンサーするオータニ。「地域に根ざしているチームを応援している」価値だけではなく、これからはともに地域を創り上げていく存在として、お互いのよさを活かしながらの取り組みが求められていきます。
ブレックスの活動をオータニの資源で手伝う、あるいはオータニの活動をブレックスの試合会場でも行うなど、双方向の活動に取り組める下地が両社の関係性にはあります。
川野)小売業とは、お客さまに「あの店は私の店」と思ってもらえること、そしてお店側も「あの人は私たちのお客さん」と思えることが理想です。いま、そうしたことを体現できているのがスポーツだと思っています。お客さまに“ご贔屓”にしていただくために、そして企業として目先の利益だけでなくサステナブルに活動していくために、スポーツチームと私たちの関係性をより強めていけたらと思っています。

オータニのサステナビリティ活動
株式会社オータニでは、地域に根ざすスーパーマーケットとして、その特徴を活かしたさまざまなサステナビリティ活動を行っています。
衣類・雑貨を回収する資源循環サービス「PASSTO」
家庭で不要になった衣類・雑貨を回収する資源循環サービス「PASSTO」の導入をしています。25店舗にPASSTOボックスを設置して、不用品(衣類・雑貨)を回収し、回収した不用品は、国内外でリユース品として再流通させるほか、リユースが難しいものに関しては再資源化を行います。

使用済みペットボトルの回収
ペットボトル飲料を販売している企業の責任として、CO₂排出量の削減効果のある水平リサイクル「ボトルtoボトル」の取り組みを開始しました。全店舗で使用済みペットボトルの回収を行い、新たなペットボトルの原料として再利用するほか、ペットボトル5本でRARAポイント1Pが付与されます。
