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ヴィッセル神戸の電車広告がサステナブルに?『スポーツチーム循環型広告』の仕掛人に隠された狙いと想い|コンタクト社長インタビュー

パレンテ

広告もサステナブルな時代へーー。

「見えるをデザインする」ブランド『WAVE』を展開する株式会社パレンテは、Jリーグ・ヴィッセル神戸のスポンサーをしています。

ヴィッセル神戸のホームスタジアムであるノエビアスタジアム神戸に向かう神戸市営地下鉄海岸線車内では、株式会社パレンテがヴィッセル神戸の応援、そして自社PRのための交通広告を掲載しました。ファン・サポーターにとっては試合に向けて気分が上がる広告。それを回収し、状態の良いものを販売、そして売上をアカデミー育成のために寄付する、まさに“循環”する仕組みを作り上げました。

企業として利益になるの?と思ってしまうような今回の『スポーツチーム循環型広告』の取り組み。サステナブルな社会の実現への想い、そして自社成長への未来に描いている想いとは?これからの広告宣伝の形を株式会社パレンテ代表取締役吉田忠史氏(以下、吉田)に取材しました。

前編
目で見るだけが“見える”なのか?|『見えるを支援する活動』を考える「目で見える」ことだけが“見える”なのか? 「見えるをデザインする」ブランド『WAVE』を展開する株式会社パレンテとSports for Socialでは、インタビューや合同イベントなどを通して“見える”について考えてきました。 今回は業界大手のジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社(以下、J&J)と株式会社シード(以下、シード)の2社を加え、各社の『見えるを支援する』活動について、対談を行いました。 各社の捉える“見える”、そこから見出される「見ようとする」ことの価値とは?...

スポーツチーム循環型広告ってなに?思いついたきっかけ・効果

ーーヴィッセル神戸とともに2023シーズンから初めて取り組んだ循環型広告。新しい形として注目も集めましたが、そのきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

吉田)循環型広告を思いつく前、私たちもクリエイティブを一生懸命考え、情熱をかけて作ったポスターが期間を満了すると廃棄されてしまうことにもったいなさを感じていました。
そんなとき、スペインのファッションブランドが「一度使用したポスターの裏面にもう一回ポスターを出した」という記事を読み、これはおしゃれでかっこいい取り組みだなと素直に思いました。

そこから着想を得て、ただポスターを回収するだけではなく、私たちも何かできるのではないか?と思い、選手のメッセージやサインなどの付加価値を加えて販売し、その収益を未来のサッカー選手の育成に寄付をするという形で循環させようと企画しました。

ヴィッセル神戸

ーー仕組みとして、関わる人皆が幸せになるような取り組みですよね。

吉田)廃棄物も削減でき、環境問題にもアプローチできるサステナブルな取り組みで、さらには若手育成の一助にもなります。サポーターさんにとっても、選手の写真入りのポスターが購入できるだけでなく、代金が寄付されることで“プチパートナー”のような気持ちになれると大変好評です。私たちとしても、購入してくださった方が部屋に飾り、SNSで発信してくだされば広告宣伝効果にもつながります。ヴィッセル神戸サポーターのライフスタイルの中にWAVEの広告が溶け込んでいく未来が想像できます。

ヴィッセル神戸ヴィッセル神戸サポーターよりご提供

ビジネス的な意味も 自社にもメリットを生む仕掛け

ーー広告の再利用は、これまであまり社会的にも着目されてこなかった取り組みのように感じます。

吉田)弊社としても、業務上のできる限りをサステナブルにしていきたいという思いでいます。レンズアップルはコンタクトレンズの通販会社として毎日数多くの方に商品をお届けしていますが、コンタクトレンズは箱に入って届き、ゴミも増えがちなものです。

レンズアップルでは、カッター不要で指1本で開封でき、畳んで捨てやすいように配送段ボールを工夫するなど、商品が届いて箱を開けて、その箱を捨てるまでのストーリー化、そしてリサイクルしやすいサステナブルな取り組みにも注力しています。今回の企画に関しても、循環型広告のおもしろさだけではなく、サステナブルな社会に向けたパレンテの想いを具現化した取り組みの一つだと捉えています。

ーー掲出期間の終わった交通広告に価値をつけ販売するだけでも“サステナブルな取り組み”と言えるかもしれませんが、収益を全額アカデミーへ寄付されるところにまで循環しているところが印象的です。

吉田)さまざまな理由がありますが、その中の一つに“イミ消費”で選ばれる企業を目指しているという背景があります。レンズアップルで取り扱っているコンタクトレンズは、メーカーさんから仕入れさせていただいて販売しているので、他の競合店さんと同じ品質が担保されています。
そんな中で、なぜレンズアップルで買いたいのか?という“選ばれる意味”を作らないと、EC事業者としては生き残っていけません。コンタクトを買うという行為に、“ヴィッセル神戸を応援できる”“若者の育成に貢献できる”という意味が加わることで、購入先を悩んだときの理由の一つになればと思いますし、買う人たちにとっても有意義な消費に繋がります。今後、循環型広告がイミ消費の一つのモデルになればいいなと考えています。

ヴィッセル神戸

スポーツは体験|お客さんの“見る”をよりよくする施策に

ーーその後、2024シーズンでも循環型広告を実施しています。広告のクリエイティブ自体も循環型にすることを意識して作られているのですか?

吉田)コンタクトレンズという“眼”に関する企業なので、第一弾は選手たちが大事にしている“想いが見える”ようなクリエイティブを、第二弾は循環型広告として部屋に飾ってもらうことも見据え、眼に関わるようなメッセージを連想できるように作りました。

ーー交通広告(神戸市営地下鉄海岸線車内)という点にもなにかこだわりがあるのでしょうか?

吉田)試合観戦の醍醐味は試合中だけではなく、観戦会場に向かう道も“体験”ですよね。チームカラーを身に着けていこうと服装の準備をしたり、試合前に選手が好きなパン屋さんに寄り道してみたり、楽しみ方は無限にあります。ノエビアスタジアム神戸に試合を見に行く道中での体験価値を高めるという意味でも、私たちの広告がサポーターのお役に立っていると嬉しいですね。これからも、試合会場までの道のりを楽しみにしていただきたいですね。

ーーどの場面でも意図が伝わり、活躍できるクリエイティブになっているのだと感じます。

吉田)試合観戦に来場した子どもが、試合の記念として好きな選手の循環型広告をワンコインで持ち帰り、自分の部屋に飾るのを想像したときに、それは選手にとってもチームにとってもうれしいことですし、その子が大人になったときに、「俺の机にWAVEのポスターが貼ってあったな。」と思い返してもらえるようなものになれば、それ以上のことはないですよね。広告としてはすぐ効果が出るものではないですが、循環型広告の話題性も含め、スポーツの体験作りに絡んでいけるような企業でありたいです。

ーー実際に循環型広告に対するお客さんからの声はいかがですか?

吉田)通常入手困難な交通広告を手にすることができて嬉しいというお声もいただきますし、売上全額がアカデミーに寄付され、未来の選手たちのボール代やトレーニング器具代になることにも喜びや楽しみを感じてくださっているようです。実際に循環型広告が飾られたヴィッセル部屋の写真を見せてもらったときは大変嬉しく、目指しているイミ消費への一歩を感じました。

「僕だからできる仕事」コンタクトレンズ会社を“見える”集団に変える視覚障がい者がいる「“見えない”からこそ“見える”」 果たして、私たちは本当に世の中が見えているのだろうか?インタビューを終えてそんな感想を持つほど、株式会社パレンテで働く青木隆典さん(以下、青木)のお話には考えさせられるものがありました。 後天的に視覚障がい者となり、見える世界から見えない世界に飛び込むことになった青木さん。整体関連の資格を活かし、ヘルスキーパーとしていくつかの会社を渡り歩いてきた彼がたどり着いたのは、「見えるをデザインする」オリジナルブランド『WAVE』を持つ株式会社パレンテでした。 見えない人がコンタクトレンズの会社で何をするのか?入社して4か月がたった青木さん、そして株式会社パレンテ代表取締役社長 吉田忠史氏(以下、吉田)に、その入社の意図と効果を伺いました。...

ーーヴィッセルのアカデミーに限らず、中高生はコンタクトレンズを使い始める世代ですよね。

吉田)メガネからコンタクトレンズに変えようと思ったときに、WAVEを試したいと言ってもらえるような企業に落とし込んでいきたいですね。
「見えるをデザインするブランド」としては、コンタクトレンズブランドに留まらず、選手がランニングをしているときに、サングラスに自分の時速やバイタルデータが見えるようなアプリの開発や、自分の気持ちを落ち着かせるために色のトーンを変えられるサングラスなど、新しい“見える”も提案していきたいです。

ーー視力補正のためにメガネやコンタクトをするだけでなく、状況に応じて「見る」を選択する未来が近づいているのも、時代の変化を感じます。

吉田)弊社でも、コロナ禍を経て人混みに酔ってしまい通勤が苦手な人もいることがわかりました。状況に応じて自分のマインドや体調を把握でき、コンディション調整がしやすくなったり、結果としてパフォーマンスが上がれば、それはそれでいいことですよね。時代に合わせて柔軟に、視覚を通じて人生を豊かにしていけるような会社でありたいです。

ヴィッセル神戸

世の中に繋がる“循環型”のアイデアをこれからも

ーー交通広告以外の形でも循環型のアイデアをお考えですか?

吉田)通信販売の会社としてデジタルコミュニケーションを利用した循環型の仕掛けを考えています。例えば、我々のWAVEのTシャツを着て歩いてくれたら、移動距離が長いほど人の目に触れて着用広告になります。着て動いてくれた移動距離を何かで還元できるようなアプリや、スポーツチームを巡るサポート活・スポーツ活のような循環型もおもしろいですよね。

ーー買う“意味”や買ってからの“ストーリー作り”はすごく大切ですね。

吉田)五感の中でも視覚は人生を豊かにする影響力が強いと思うので、いろんな意味で視界がクリアに見えて、人に言いたくなるようなストーリーがWAVEで作り出せれば、WAVEで買う意味を見出して“イミ消費”してくれる人たちが増えるのではないかと考えています。自己利益だけを追求するのではなく、もっと社会に還元できるようなことを循環型でやってみたいですし、みんなにとってよいものを作り出していける世の中でありたいですよね。

ーーありがとうございました。

『循環型広告』の取り組みが資源循環技術・システム表彰『奨励賞』を受賞!

株式会社パレンテがヴィッセル神戸とともに行った『循環型広告』の施策が、令和6年度(第50回)資源循環技術・システム表彰で奨励賞を受賞しました。

https://www.cjc.or.jp/cjc_news/r06syshyo/r06_sys_hapyou2.pdf#page=3

受賞コメント

資源循環技術・システム表彰「奨励賞」を受賞できましたこと、大変光栄に存じます。これもひとえに、ご協力くださった神戸交通局様、日頃よりご支援いただいているサポーターのみなさま、ヴィッセル神戸のみなさまのおかげです。本当にありがとうございます。
この受賞に安住せずに、今後も引き続き社会に貢献できる価値あるサービスの提供と、視覚を通して「見えることの大切さ」をお届けし人生を豊かにすることに貢献していきます。

後編
スポーツにおける“見える”とは?|北澤豪と考える特別対談「見えるをデザインする」ブランド『WAVE』を展開する株式会社パレンテとSports for Socialでは、インタビューや合同イベントなどを通して“見える”について考えてきました。 今回は業界大手のジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社(以下、J&J)と株式会社シード(以下、シード)の2社を加え、各社の『見えるを支援する』活動に関する対談では、各社の捉える“見える”、そこから見出される「見ようとする」ことの価値を考えてきました。 後編では一般社団法人日本障がい者サッカー連盟(以下、JIFF)の北澤豪会長を加え、スポーツを絡めながら「見える」について深めていきます。...
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