タクソノミーとは「分類」を表す英語です。金融におけるタクソノミーでは、脱炭素社会の実現に向けて欧州連合(EU)が2020年に「EUタクソノミー」という分類枠組みを公表し、2022年から本格適応されることで注目されています。そこで今回は、「タクソノミー」、「EUタクソノミー」について概要をわかりやすく解説していきます。
タクソノミーとは
「タクソノミー(taxonomy)」とは、「分類」を意味する英語です。元々は生物を分類することを目的とした生物学の一分野を表す用語として用いられています。こうした物や概念の分類を体系化する考え方を応用し、「持続可能性に貢献する経済活動」を分類・列挙したものが金融におけるタクソノミーです。
EUタクソノミーとは
策定の背景
EUでは2019年12月に欧州グリーンディールを公表し、2050年までに気候中立(温暖化ガス排出量の実質ゼロ)を目指すことを表明しました。そのため、目標に向けた産業技術のイノベーションと並行して、それを可能にするための莫大な資金が必要になります。そこでEUは、投資家の資金と企業の設備投資を「脱炭素化」に集中させる金融戦略として、2020年6月に「タクソノミー規則」(EUタクソノミー)を法令化しました。
EUタクソノミーとは
EUタクソノミーとは、何がサステナブルであるかを明確化するためのタクソノミー(分類)です。投資家の資金や企業の設備投資を集中させる働きがあると同時に、一見、環境に配慮しているように見せかけて、実態はそうではない「グリーン・ウォッシュ」を排除する働きがあります。また、EUタクソノミーは「気候リスク経済」から「気候中立経済」へ移行するためのツールとして用いられます。
6つの環境目的と4つの適合要件
EUタクソノミーでは、以下の6つの環境目的と4つの適合要件を規定し、何をもって「グリーンである」のかを定義しています。
また、具体的にEUタクソノミーに適合する環境活動は主に以下の3つに分類することができます。
- 自らの環境負荷低減活動(Own Performance)
自らの活動そのものが6つの環境目標のうち1つに実質的に貢献している活動
Ex)低炭素エネルギーの生成など - イネーブリング活動(Enabling Activities)
自らの活動が他(他者)の6つの環境目標のうち1つ以上に実質的に貢献可能とする活動
Ex)低炭素を可能とする製品・機械など - トランジッション活動(Transition activity)
現在は(ニア)ゼロ排出ではないが、今後の低・脱炭素化に期待できる活動(ゼロ排出に向けた過渡的経済活動)
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32020R0852
今後の展望(日本企業への影響)
EUタクソノミーによる日本企業への影響は、「基準が作られることによる影響」と「開示義務による影響」の2つに分けて考えられます。
- 基準が作られることによる影響
EUタクソノミー自体はあくまで分類ですが、タクソノミーに適合していない製品・サービスはEU市場における評価(価値)が下がる可能性があります。 - 開示義務による影響
元々、EUタクソノミー規則では主にEU域内の企業に経済活動に関する情報の開示義務が課せられるとされていた。しかし、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)による対象の拡大に伴い、欧州の金融機関や投資家から資金を調達している日本企業は一定の影響を受ける可能性があります。
EUタクソノミーは、EU域内のタクソノミーであるが、世界に先行したタクソノミーでるため、その影響力は大きいものです。カナダや中国をはじめとしたEU圏外の国家においても独自のタクソノミー案が考えられています。また、その流れを受けて「サステナブルファイナンスの基準共通化を進める国際的プラットフォーム(IPSF)」では、国際共通基準の制定が議題に上がっています。
日本は現在、独自のタクソノミーは規定されておらず、「グリーンかどうかの基準だけでは企業努力の正当評価が難しい、移行段階の取り組みにも注目・評価するべきだ」というスタンスを取っており、今後の動向が注目されます。
https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210618005/20210618005-3.pdf