私にできる「スポーツ×SDGs」|神村 昌志

私がJリーグの仕事に携わるようになったのは2016年のことです。
当時J3に降格し、新任の社長が着任したばかりの大分トリニータに「経営改革並びに社長補佐」の使命を持って着任したのがそのスタートです。それから5年近くの歳月が流れ、「スポーツ・ビジネスにおける経営」の本質的な部分もようやく理解できてきた気がします。

スポーツ・ビジネスにかかわる人たちはよく「スポーツの力で地域を元気にする」とか、「県民の活力の源になる」といったことを口にします。多くのクラブのホームページにも、「経営理念」・「ビジョン」としてそう書かれています。

私は、この言葉に何とも言えない違和感を覚えていました。理由はいくつかあるのですが、主たるものは3つ。

①なにか「上から目線」な印象がある(元気にするとか、活力になるとか・・・・)
②言葉が曖昧で具体的にどういう状態を意味しているのかよくわからない
③サッカーだけでそんなことできるのか(サッカーに興味がある人ってどれくらいいるのかな)

企業経営においては、企業理念やビジョンは非常に重要で、個人的には「本質的かつ明確」でなければならないと思ってきました。会社説明会・株主総会・顧客向けなどあらゆる場面で、語ることとして、経営者として最も大切にしてきました。

ですから、サッカークラブのそれが極めて曖昧であることが気持ち悪くて仕方ありませんでした。
2018年の初めに、自身にくすぶるモヤモヤ感を取り払うためにも、行動を起こすべきだと心に決めて動き出しました。
「障がいのあるなしに関わらず、みなが一緒になってスポーツを楽しめる社会づくりのきっかけになる」
これが、私が掲げたキー・フレーズです。

東京オリンピック・パラリンピックを控え「障がい者スポーツ」に対する注目は高まっています。しかしその多くは、素晴らしいパフォーマンス・スキルを見せるパラ・アスリートに対し「障がいがあるのにすごいよな・・・」と拍手・称賛を送ることが中心になっているような気がしていました。(少なくとも私はそうでした)。でも、本当は障がい者の方の大半は、そんな状況にないのだろうと思っていました。
障がい者として、特別視されるのではなく「普通にみんなと一緒に」が大切なのではないかと思ったのです。

何人かのメンバーに声をかけ、私が始めたのは以下のことです。

①すべてのホームゲーム開催時に「障がい者スポーツ体験」ができる場所を作る
②とにかくいろんな種類の競技・種目の方々・団体の方にお越しいただく
③サッカー観戦に来ている方々に、「一緒にやろう!!」を声がけしていく
④体験コーナーの運営は、大学生ボランティアサークルなどに任せる
⑤サッカー選手にも参加してもらい、「みんなで同じ種目やってみる」

ボッチャやゴールボール、パラパワーリフティング・・・・会場を作ったものの、当初はみなさん遠目から眺めているだけで、なかなか「一緒にやる」ことができませんでした。
その突破口を開いてくれたのは、子供であり、高齢者の方々でした。
彼らは、偏見や躊躇もなく「一緒にやること」を楽しんでくれました。そして、徐々に大人も参加するようになってくれました。

ホームゲームの度にこの活動を行っていき、参加者も増えてきましたが次のハードルは「この活動が広がらない・注目されない」ということでした。
結局は、スタジアムで行われているイベントの一つにしか過ぎないということです。
「大事なこと・意味のあること」をしている自負はありましたが、そこにもう一つ必要な「資金」を確保し継続的に活動を行えるようすることが重要であることを痛感しました。

そこで、「1年間・21回・全試合」この活動をしてきたことを、資料にまとめ企業を訪問し始めました。金融機関の方にもご協力をいただき、このような活動に関心・共感を持っていただける経営者の方々をご紹介していただきました。

そこで、出会ったのが東京・日本橋にあるサインポスト株式会社の蒲原社長(https://signpost.co.jp/)でした。
蒲原社長は、私に詳しい説明などを求めることもなく、じっと資料を見ておられました。
そして、一言「協力します、この活動は素晴らしい」と仰っていただきました。
そのおかげで、2020年のコロナ禍にあってもこの活動を継続することができました。
本当に感謝しています。

しかしながら、コロナによってスタジアムへ足を運ぶ方々は激減し、活動自体も規模の縮小を余儀なくされていきました。
これではいけない、ここで火を絶やしてはいけないと思いながら、なんとか「このような活動を継続し、かつもっと多くの人に知らせていきたい」という思いが強くなり、本サイト「sports for social」の立ち上げを仲間に提案しました。

私自身は、ネットメディアづくりの専門ではありません。知識もほとんどありません。
しかし、その仲間が「よし、これやる!!」と、これまた詳細の話などする間もなく、サイト立ち上げに取り組み始めました。若い人のバイタリティ、エネルギー、スピード感に感動するとともに、運営実行はお任せして、私は私のできることをやっていこうと心に決め今日に至ります。

当初は原稿もなかなか集まらなかったり、分野も限られたりしていましたが、立ち上げから10か月を経て次第に「企業・NPO・個人」など様々なセクターの方が記事を投稿してくれるようになりました。取り組み内容も障がい者スポーツに限らず、環境・ジェンダー問題・認知症予防・などどんどん幅が広がってきています。

私個人は、社会起業家でもないですし、個々の分野に深い見識があるわけではありません。ただ、「いい活動だな、素晴らしい取り組みだな」と感じることはできます。
幸いにして現在スポーツにかかわる仕事をしていて、そのクラブ・チームの持つ発信力や社会的影響力の大きさを強く感じています。

これを掛け算にしたい。

自分では特定分野の課題解決に力がなくても、活動を広め、関心のある方を集めていく、つながるきっかけを作っていくことはできるはずだと思っています。

2021年はモンテディオ山形のホームゲームにて:
①SDGs体験・参加イベント
②ユニバーサル・スポーツ体験コーナー
③スタジアムから出るごみの徹底削減チャレンジ
の3本を年間通じて走らせます。そして、その様子をこのサイトをはじめとしたメディア・SNS等で発信していきます。

この取り組みが、山形の地だけにとどまらず、またサッカーの1クラブの活動にとどまらず、全国価値・様々なスポーツ競技団体に広がっていくことを心から願いながらその活動に邁進していきたいと思っています。

それを実行できたときに初めて「スポーツが社会に与える力・スポーツで社会を元気にする」といったことが胸を張って言えるようになるのだろうと思っています。

コロナがどんな状況であろうと、私たちはしっかり着実に前進していきたいと思います。

神村昌志

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