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〜The Ball〜「良い意味で障がい者のことを障がい者だと思っていない」|ブラインドサッカー 和地 梨衣菜選手

ひとえに「サッカー」と言っても、人によって”楽しみ方”も違えば競技上の”ルール”も異なります。

皆さんは「ブラインドサッカー」をご存知ですか?
いわゆる「見えないサッカー」と言われているこの競技は、ゴールキーパー以外が全盲の選手で、アイマスクを装着し、音の出るボールを用いてプレーします。(※カテゴリによっては全盲以外の選手もアイマスクを装着すれば試合に出場することができる)

今回の〜The Ball〜では、ブラインドサッカークラブに所属し、ゴールキーパーとして活躍をしている 和地 梨衣菜選手 を取材させていただきました。

ーーライター)今日はよろしくお願いします!早速ですが、和地選手はもともとサッカーをやられていたんですか?

和地)はい、高校入学と同時にサッカーを始めました。元々サッカーは好きだったんですけど、やる機会というか、なかなか女子がサッカーをするというのが自分の年代だとまだなくて。。。多分、都心部では当たり前だったと思うんですけど、出身が田舎なので認めてもらえないじゃないですけど女の子がやるものじゃないっていう風なものがあって高校から始めました。

ーー出身はどちらなんですか?

長野県、飯田市っていう長野県の下の方です。

ーー長野県だとサッカーは男子がやるスポーツという文化があったのでしょうか?

長野県の中でも当時から女子サッカークラブはあったのですが、私の出身地域は男子がやるイメージでした。私がサッカーをやりたいと思ったのは保育園ぐらいの時だったんですけど、その時はまだ女の子でサッカーをしている人が周りには少なくて。やっている子も何人かはいたんですけど、やっぱり親がどちらかというとバレーボールとか女性人気が高いスポーツが好きなので、それでサッカーというものを全然知らなくて。
サッカーをやりたいと伝えたところ、それは女の子がやるスポーツじゃないんだよって言われてなかなか認めてもらえなかったんですよね。

ーーそれは、悔しいですね。

そうですね。

ーー高校からサッカーを始めて、ポジションはどこをやってたんですか?

高校で始めて、最初はバック(ディフェンダー:DF 守備的なポジション)をやっていたんですけど途中からキーパー(ゴールキーパー:GK ゴールを守るポジション)になりました。

ーーそれで今に至っていると?

そうです、そうです。

ーーなんでキーパーをやることになったんですか?

私が入った高校は当時『部』ではなく『愛好会』でした。なので、経験者も2,3人しかいなくて。
完全に初心者集団ですね。経験者の人はフィールドの選手だったので、誰かがキーパーをやらなくてはいけないことになり、成り行きで私がやることになりました。
本当はバックをやりたかったんですけどね(苦笑)
横浜F・マリノスにいた中澤佑二さんが大好きだったので・・・

ーーそうだったんですね。

はい。ボンバー(中澤佑二さんの愛称)が好きなのでどうしてもバックになりたかったんですよ。それで最初はセンターバックやサイドバックをやらせてもらってたんですけど、やっぱキーパーって人気がなくて、女子だとボールが怖いとか痛いとかやっていたキーパーの子が次々に一か月持たないくらいに辞めてしまって・・
でも試合の前に誰かがキーパーをちゃんとやりださないと今後試合に勝てないし出られないよって話になり、「みんなやりたがらないので誰かがやらなければいけない!じゃあ自分がやれば丸く収まるな。」と考えて志願しました。

ーーすごい、自己犠牲の精神がすごいですね。

本当に理由はキーパーが好きとか、やりたかったとかではなくて、私がやれば丸く収まるし、バレーボールをずっとやっていたので、向かってくるボールにも慣れていたので適任かなと思いまして。

ーーなるほど〜。それではやりたくてやり始めたわけではないんですね。

最初はそうなんですよ。

ーーちなみに、人数は11人揃っていたんですか?

はい!いました。最初はギリギリぐらいだったんですけど、一応11人以上はいたので試合は可能でした。

ーー長野の中だと女子サッカーチームはどのくらいあったんですか?

当時で8つぐらいはあったと思います。

ーー最後の大会の結果はどうでしたか?

3年生の時は、優勝しました。

ーーおー凄いですね。全国大会や皇后杯も出たんですか?

皇后杯は私達の代までは、高校でエントリーができなかったので、経験することができませんでした。

高体連の大会の場合、女子は県大会で優勝しても更に北信越で上位に進まないと全国大会の出場権を得ることができません。
北信越大会までいくと福井工大やジャパンサッカーカレッジなど強豪が出てくるので、、そこでどうしても負けちゃって。女子は1位のチームしかいけなかったんですよ。それで、いつも3位で終わっていました。

ーーなるほど。つまり全国大会までは行けなかったってことですか?

そうなんですよ。

ーーでも、凄いですね。高校卒業してからは、サッカーを続けるか続けないかの迷いはありましたか?

そうですね。サッカーは続けたいなと思ってはいたんですけど、高校の最後の方に男子のクラブチームと練習試合した時にちょっと接触して怪我をしたんですよ。それでも、女子チームはキーパーが1人しかいなかったので、無理してそのままプレーをしてしまったんですね。それもあって大学に入ったタイミングでまずは一回治さないといけないと思い手術をする決断をしました。
大学に進学し部活に入るかは迷ってたんですけど、やっぱり入ってすぐに出来ませんというのも気まずいなと思ってしまって。入ったはいいけど出来ないのかよってなるのが嫌だったので入りませんでした。クラブチームも探していたんですけど、思いの外怪我が長引いてしまい、結局どこにも所属せずにずるずると引きずってしまって・・・
その後、ブラインドサッカーに出会った感じですね。

ーー大学は長野県の大学に行かれたのですか?

いえ、神奈川県です。

ーー神奈川県の大学に行かれたんですね。なぜブラインドサッカーに行こうと思ったのですか?ここはすごくお聞きしたいポイントです。

実はブラインドサッカーはもともと全然知らなくて。大学では教育系を専攻していたのですが、その中の教授の一人が障がい者スポーツ専門だったんですね。その先生の授業がきっかけで、車いすバスケや、ゴールボール、ボッチャ、ブラインドサッカーを知ることになりました。ブラインドサッカーにおけるゴールキーパーの役割を聞いた時に、元選手の私は興味津々。「見えてなくても見えているキーパーから点を取る。」なんでこんなことが出来るのかな?と。。純粋に凄いなって思って、私も「見えてない人のシュートを受けてみたい!」それでチームを探すようになって飛び込んでみました。

ーー最初に入ったチームが今のチームですか?

そうです。
神奈川県の横浜で活動している「buen cambio yokohama」というチームです!

ーー大学卒業して社会人プレイヤーとして活動しているんですか?

いえ、大学卒業して大学院(現在2年生)に進学したので、在学しながら活動に参加しています。

ーー大学院の2年生なんですね。なるほどなるほど。話が脱線して申し訳ないのですが、ちなみに大学院ではどんな勉強をしていますか?

大学院には『アダプデットスポーツ』を学びたくて進学しました。「障がいがある子もない子も、小さい子も高齢者の方もルールや用具を工夫すればみんなが楽しめるスポーツがつくれるのではないか」という考えを学んでいます。簡潔に言うと、ルールや用具等を工夫しながら、出来るだけ沢山の人が楽しめるスポーツをしましょうっていうのが『アダプデットスポーツ』です。日本ではまだ認知率も低く、学べる場所が少ないと思います。大学院にいったんですけど、たまたま教授にアダプデットスポーツを専門としている方が2人もいたのでそこの分野を学んでいます。

ーーそれは、アダプデットスポーツを学びたくて専攻したのか、ブラインドサッカーっと出会ってもう少し深ぼって学びたいと思ったのか、どちらなんですか?

私はアダプテッドスポーツが先でした。もともと教育の勉強をしていて、特に体育課教育体育の勉強をしていたのですが、体育授業の在り方に疑問を持っていました。学校には運動が物凄く苦手な子と物凄く出来る人の両方が存在します。そういう時に、体育授業は出来る子がやって出来ない子がボールに触らないのがこれまでの常識でした。本当にそれで良いのか?みんなが参加できる授業づくりは実現できないのか?これを実現するためには、障がい者理解が自分には足りていないなと思いました。今の私の力だとクラスを持った時に、障がいがある子がいたらその子をどうやってうまく入れていけるだろうか?私にはまだ明確な答えがありません。そういった背景からアダプテッドスポーツを学ぼうと思い、その1つがブラインドサッカーでした。

ーー素晴らしい課題意識ですね。将来は先生(教育者)になりたいんですか??

そうですね。学校現場で教員になりたいと考えています。

ーーブラインドサッカーに話を戻しますが、実際に入ってみて、想像していたものとのギャップは感じたりしませんでしか?

そうですね。最初は、やっぱり「見えていない人のシュートは止めやすいだろう。」と思っていたのですが、実際は真逆で(苦笑)
「通常のサッカーの何倍も止めにくいな」っていうのが一番最初の印象ですね。

ーーへ〜。そう感じたのは、なぜですか?

やっぱり見えていると、キッカーの蹴る瞬間のモーションやゴールを狙う場所を目視で確認するクセが掴みやすいのですが、ブラインドサッカーは見えていないので視線(クセ)がゼロなんですよ。ドリブルとかをしてくる中で味方選手も見えていなので予想外のディフェンスをされたり、いきなり打たれたり、ドリブルしている途中にキックで蹴られたりなどタイミングが読みずらいんですよね。

ーーこれまたへぇ~、最初はこんなに難しいんだっていう感覚でしたか?

そうですね。びっくりしました!

ーーちなみに、ブラインドサッカーチーム「buen cambio yokohama」での受け入れられ方はどうでしたか?

本当、もの凄くいい人達なんですよ。視覚障がいがある人ない人みんなが交じり合っているチームなので、障がい者理解はものすごくあるのですが、それ以外にブラインドサッカーって男子の中で女子が混ざって試合にでるんですね。女子だけで試合が出来ないんですよ。人数があまりいないのもあって。なので、やるとなったら男子の中で試合に出るのですが、キーパーの中で女子がやるっていうのはなかなかブラインドサッカーのチームでいないんですよね。でも、チームで「キーパーをやりたい!」って申し出た際に物凄く快く受け入れてくれました。「仲間が増えたー」、「一緒に頑張ろう」といった感じに、見学に行った日からチームメイトとして暖かく受け入れてくれましたね。

ーー素晴らしいチームですね。ちなみに、チームの健常者は何人ぐらい所属しているのですか??

すごく居心地がいいです!
私の所属する「buen cambio yokohama」は健常者の方が多くて、視覚障がいがある方が数人しかいないんですね。国内大会だと見えてても同じ条件でアイマスクをすれば、フィールドでも出られるんですよ。なのでフィールドで視覚健常者の選手はいっぱいいます!

ーーそう考えると、ブラインドサッカーは決して障がい者スポーツではないということですね?

そうですね。完全な障がい者スポーツではなくて、障がいがある人達が楽しめるようにつくられているけれども、障がいがある人もない人も一緒じゃないと点が取れないし、、

ーーまさにアダプデットスポーツ!!でも、難しくないですか?みんなぶつかったりして怪我はしないんですか??

通常のサッカーより全然ぶつかります。
ブラインドサッカーは両サイドに壁があるんですよ。
壁にぶつかることもあるのですが、その時に脳震盪とかは結構多いです・・・

ーー結構激しいスポーツなんですね。

激しいです。

ーー試合は何分ですか?

通常は、20分で10分ハーフの20分です。

ーー点は入るスポーツですか?

点は入ります。入るときは通常のサッカーよりも入ることがあります。

ーーイメージはフットサルと同じぐらいの広さですよね?

そうです!フットサルに似ている部分は多いですね。

ーー面白そうですね、ちょっとやりたくなってきました!

面白いと思います。自分もまだまだボールを蹴れないです。

ーーすごい専門的な話になってしまうんですが、ブラインドサッカーにおいて唯一の目が見えるっていう立場だと思うのですが、どういうことが求められるのですか?

そうですね、ブラインドサッカーのキーパーは通常のサッカーのキーパーよりも何倍も指示を出す必要があいます。あとは、見えているのはキーパーだけなので戦術に関してもそうですし、「buen cambio yokohama」はキーパーに全てを託してくれています。それぞれの決定権をもっているのが監督じゃなくてキーパーがもっている。チームによるとは思いますが、キーパーに決定権があるチームも少なくないと思います。

ーーサッカーだと考えられない指示の出し方とかだと例えばどういうことがありますか?

例えば、通常のサッカーだと「右1枚いるよ!」で伝わるのが、ブラインドサッカーでは「何メートルのどこに相手が1枚いるよ!」という伝え方をしないといけません。より具体的に数字を教えるという点ですね。
また、通常のサッカーはみんな見えているのでバックの選手にわざわざ今のゲーム状況を伝えることはないと思うのですけど、ブラインドサッカーの場合は最終にいるバックの選手に「今、前線で自分のチームがボール持っている!」とか「こっちには誰も残っていないよ!」とか「今の相手ボールに代わって準備して!」とか常にゲーム状況を伝え続けるっていうのがこの一番大きな特徴かもしれないです。

ーーなるほど!キーパーのポジションはとても重要なわけですね。サッカーも大事ですけど、より大事に感じますね。司令塔がキーパーっていうことですね?

そうですね。そんな感じですね!

ーー少し大きな観点で、ブラインドサッカーを通してご自身が変化したことや成長したことってありますか?

そうですね。私は結構障がい者スポーツを学んではいたんですけど、実際に視覚障がいのある方と関わる機会ってなかなかなかったんですよね。常に近くに視覚障がいの方がいるっていう状況に変わってからは、障がい者への見方が大きく変わりました。特に偏見があったわけではありませんが、障がい者の方がいたら「常に声をかけてあげなければいけないんだ。」とか、障がいがある方に対して重く受け止めるじゃないですけど、「助けてあげなきゃ」とかこっちが「サポートしてあげなきゃ」というイメージが強かったんです。でも実際は、一緒にいたら全然そんなこともないですし、自分が視覚障がいの人に助けてもらっていることも沢山あります。ただ、見えていないっていうことはあるけれど、「普通の人なんだな〜!」というのが1番の変化ですかね。日本人ってなにもかも出来ない人、知らない人を過度に意識する人が多いんだなって。。

ーーユニバーサルデザインの考え方として、個人ではなくチームとしてどういう意識をもっているのでしょうか?

そうですね、うちのチームいい意味で視覚障がい者のことを視覚障がい者と思っていないところがあります。

ーーそれこそ血液型が違うとか、髪色がちがうとかそれぐらいのレベルで捉えているということですか?

そうですね。特別な意識はしていません。当然、サポートが必要な時はあります。みんなでごはんを食べるときは、小皿に取るとか。それがやってあげるっていう感覚ではなくて日常の一コマとして自分が箸をもって食べるっていうのと同じ感覚でやっています。みんながみんなごく自然に当たり前のようにやっていますね。
ここに入る前は「どうしてあげたらいいんだろう」って考えてたりしていました。視覚障がいのことについて振れない方がいいのかなとは思ったのですが。人によりますが、うちの視覚障がい選手なんかは非常に明るいので障がいについてもオープンに話をしてくれます。

ーーブラインドサッカーはまだあまり認知されていないスポーツだと思いますが、一番の魅力や伝えたいことはありますか?

見てて面白いポイントは、「見えてない人がドリブルをしていって、見えててしかもゴールもそんなに大きくないし取れそうなキーパーからゴールを決める」というのが一番面白い所かなって思いますし、そこは魅力的な部分だと感じます。

ーー皆さん静かに見なきゃいけないんですよね??

そうですね、決まったときは沢山声を出していただいて、後は静かに。

ーー決まったときは声を出していいのですか?

そうですね、プレーが止まったときやゴールが決まった瞬間は沢山声を掛けてもらって、試合中は選手が気になっちゃうので静かにしてもらっています。

ーーそういうところが魅力ってことですね。

そうですね、あとは、見えている人たちの声の連携もそうですし、ゴール裏にいる「ガイド」のポジションも重要な役割を担っています。「ガイド」がいるからシュートが決まることが多いのですが、あまり注目はされていなくて、通常のサッカーとは違って「あんなことを言っているんだ!」とか「見えている人同士でこういう指示を出し合っているんだ!」とか、普通ではなかなか見れない声を掛け合っていて面白いかなと思います。

ーー「ガイド」は1人ずつですか?

そうですね、各チーム1人ずつ。主にシュートを打つひとに声を掛けています。

ーーよく考えられたスポーツですよね!それでは、長いインタビューも最後の質問です!ブラインドサッカーを今後どうしていきたい!などの想いはあったりしますか?

そうですね、今はやっぱりパラリンピックがあるのでちょっとずつは認知されてきていますし、競技人口もチームもちょっとずつ増えてきていて段々広がりつつあるのですが、まだまだ認知率や競技人口が少ないというのは課題に感じます。「障がい者がやるものでしょ」と思われてしまっている。実際にはそうではなくて、特殊のルールがあるだけです。Jリーグじゃないですけど、いろんな人がブラインドサッカーを推奨してくれて、「このチームを応援しているんだよね」「このチームのサポなんだよ」みたいな声がどんどんブラサカ界で聞こえてくると嬉しいですね。それがまず日本で起きて、世界に広がっていき・・・
すごい大きな夢ですけど、ブラインドサッカーはブラインドサッカーとしての独自の文化をつくっていきたいと思っています!

ーー素晴らしい。どんどん多くの人に伝えていきましょう。有難うございました。